【補足】数学的準備①:テイラー展開

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 久しぶりチュウ!アル中ピカチュウは数学にも強いので、今回は FP を影で支える数学に触れる記事を初めて書くチュウ!資金計画における 6 つの係数の一般式は複雑な形をしていたから、関数電卓がなくても大まかな金額を計算できるような近似式を導出することを念頭に置いているチュウ!例によってチュウチュウ面倒なので以降はアル中ピカチュウのキャラを捨てるチュウ!

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目的

 本記事の最終的な目的は「資金計画における 6 つの係数」すなわち、終価係数&原価係数年金終価係数&減債基金係数資本回収係数&年金原価係数の一般式の簡便な近似式を導出することである。近似式とは、文字通り「近く似通った数値を与える式」であり、厳密な式よりも精度は劣るものの、適切な状況下においては短時間で十分に正確な数値を計算できることに有用性がある。買い物をしていて「298 円の 30% 引きはいくらか?」と思ったときに「だいたい 300 円の 30% 引きだから 210 円ぐらいか」と頭の中で即座に計算することは、まさしく一種の近似行為である。

 「資金計画における 6 つの係数」はどれも指数または分数を含んでいるため、関数電卓を使わないことには計算が困難である(通常の電卓でも計算できないわけではない)。そこで、たとえば小数点以下の正確な情報までは要らず、だいたいの金額が知れればよいといったケースに対して、6 つの係数が指数を含まないより簡単な式で近似的に与えられることを示すことを最終的な目標とし、この記事では最初の段階である数学的準備について記す。

 なお、高校生程度の微分の知識を前提とする。結果に至るまでの導出には興味がない、または考えたり理解したりするのが面倒だという読者は、最終結果だけをまとめた以下の記事(書いた後でリンクを載せるチュウ!)に飛んでいただいてかまわない。

テイラー展開

 適当な関数 \( f(x) \) を \( x \) のべき(累乗のこと)で次のように展開したとき、これを \( f (x) \) のテイラー(Taylor)展開と呼ぶ。

\[ f (x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{f^{(n)} (0)}{n!} x^n \ . \]

より詳しくは \( x = 0 \) 周りでのテイラー展開と言い、特に \( f(x) \) のマクローリン(Maclaurin)展開と呼んだりする。ここで \( f^{(n)} (0) \) は関数 \( f(x) \) の \( n \) 次導関数の \( x = 0 \) における値を表す。記号 \( \sum \) は和の記号であり、上式を具体的に書き下すと

\[ f (x) = f^{(0)} (0) + f^{(1)} (0) x + \frac{f^{(2)} (0)}{2!} x^2 + \cdots \]

である。

 さて \( x > 0 \) とする(FP への応用を考える際には基本的に \( x > 0 \) なのでこうしておくが、数学的にはこの条件は不要)。上式で省略した部分 \( “ \cdots ” \) は \( x \) の \( 3 \) 次以上の項、すなわち \( x^3, x^4, x^5, \dots \) である。しかし、\( x \) が非常に小さいとき(\( x \ll 1 \))は \( x \) に比べて \( x^2, x^3, x^4, \dots \) は圧倒的に小さいので、上式は

\[ f (x) \simeq f^{(0)} (0) + f^{(1)} (0) x \]

と近似できるであろう。これこそが \( f (x) \) の近似式であり、以下では、この近似式を「資金計画における 6 つの係数」の全てに適用し、各係数の簡単な近似式を得ていくというわけである。

テイラー展開:例

 例として、終価係数をテイラー近似してみる。終価係数 \( k_1 \) とは、次の一般式で与えられるのだった:

\[ k_1 = (1 + r)^n \ . \]

ここで \( r \) は利率、\( n \) は年数である。これを \( r \) の関数と見て、上の表記で議論を進めるために \( f (r) \) と書くことにする:

\[ f (r) = (1+r)^n \ . \]

\( r \) は基本的に \( 1 \) よりずっと小さい、つまり、たとえば利率が \( 1 \)% なら \( r = 0.01 \) であるので、終価係数 \( k_1 = f (r) \) は次のように近似できる:

\[ f (r) \simeq f^{(0)} (0) + f^{(1)} (0) r \ . \]

このうち、\( f^{(0)} (0) \) は日本語では「\( f (r) \) を \( 0 \) 回微分したものに \( r = 0 \) を代入したもの」であるが、\( 0 \) 回微分するというのは微分しないことと等価なので

\[ f^{(0)} (0) = (1+0)^n = 1 \]

である。次に、\( f^{(1)} (0) \) は「\( f (r) \) を \( 1 \) 回微分したものに \( r = 0 \) を代入したもの」であるが、\( f (r) \) を \( 1 \) 回微分したものは

\[ f^{(1)} (r) = \frac{\partial}{\partial r} [ (1+r)^n ] = n (1+r)^{n-1} \]

なので、これに \( r = 0 \) を代入したものは

\[ f^{(1)} (0) = n (1+0)^{n-1} = n \]

である。以上より、終価係数 \( k_1 = f (r) \) の近似式

\[ k_1 \simeq 1 + nr \]

となる。

厳密式と近似式の比較①

 直上で導出した近似式と、元々の厳密な式を比較してみる。まず、厳密な式は

\[ k_1 = (1 + r)^n \]

だった。これは指数(\(n\) 乗)が入っているので、たとえば運用年数が \( n = 25 \)年の場合には、同じ掛け算を \( 25 \) 回するか、指数に関する通常の電卓のコマンド機能を覚えているか、調べるか、あるいは関数電卓を持ち出さなければならない。

 一方、近似式の方は

\[ k_1 \simeq 1 + nr \]

であり、これなら通常の電卓でも一発で計算することができる(嬉しい!!)。

厳密式と近似式の比較②

 近似式はあくまで近似式なので、元の厳密な式と比べてどれだけの精度を保っているかを調べなくてはならない。例として「年利 \( r = 1 \)% で運用期間 \( n = 25 \) 年」の場合を調べてみると、厳密な式は

\[ k_1 = (1 + 0.01)^{25} = 1.28 \]

である。一方、近似式は

\[ k_1 \simeq 1 + 25 \times 0.01 = 1.25 \]

であるから、少数第一位まではなかなかよい近似を与えていると言えるだろう。

 ただし、近似式の適用条件として利率 \( r \) が \( 1 \) に比べて非常に小さい(\( r \ll 1 \))ことが大前提となっていたことを注意しておきたい。あまり大きな利率は実用上ありえないので考えなくてよいが、\( 3 \)% や \( 5 \)% ぐらいになってくると上式では近似の精度に不満を感じるようになるだろう。そういうときは、上で切り落とした \( 2 \) 次の項(\( x^2 \) の項)を復活させればよいのであるが、これは次回の記事で扱うことにする。

まとめ!

 「資金計画における 6 つの係数」の簡便な近似式を導出するための準備として、テイラー展開を扱ったチュウ!応用例として終価係数を扱い、指数を含んだ厳密な式に対して、通常の電卓でも即座に計算できる近似式が得られたチュウね。両者の式は、少なくとも年利が \( r = 1 \)% の場合にはよい一致を示すことを確かめたチュウ!利率が 3% ぐらいになってくると今回の近似では精度が不足するので、次回の記事(直下のリンクで飛べるチュウ!)では精度を上げることを考えるチュウ!

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